それでも文字は読まれ続けるのか ――活版印刷の実験制作
好きだった雑誌は、いつの間にか廃刊になり、
好きだった漫画は、紙の単行本が出なくなった。
私自身も、気づけば電子で読むことが増えた。
それでも私は、まだ本を買っている。
重たいと愚痴りながら出先で本を買い、
本棚に「実体」として並んでいることに、どこか安堵している。
私は2014年から、活版印刷とデザインの工房を続けてきました。
印刷業界が縮小していく中で、「なぜ活版印刷を?」と聞かれることは少なくありません。
活字は摩耗し、紙は廃番になり、資材は値上がりを続ける。活版印刷は、やがて「古い技術」として保存されるものになっていくのかもしれません。
それでも私は、紙が好きで、文字が好きで、
印刷という行為そのものが好きです。
今回の制作は、活版印刷の「美しさ」を目的としたものではありません。
活字が摩耗し、欠け、印圧やインク量の揺れによって文字の表情が変わっていく過程そのものを、
印刷物として残すための「実験」です。
最初の数枚は調整を行いますが、その後は均一さを求めることをやめ、活字と紙のあいだで起こる偶発的な現象を、積極的に受け入れながら刷り続けています。
文字の擦れや欠けは失敗ではなく、活字という物質が、紙の上で生きている痕跡だと考えています。
文字が欠けても、摩耗しても、それでもなお「読まれていく」文字たち。
活字という物質の揺らぎと、読むという行為が互いに補完し合う関係を確かめたいと思いました。
活字は摩耗し、やがて使えなくなります。
印刷された文字も、完全な形を保つことはありません。
それでも、紙の上に現れた文字は、
読む人の中で補われ、意味を持ち続ける。
活字を摩耗させることは、
同時に活字を生かすことでもある。
本作は、こうした実験に至る経緯や考えをまとめた冊子と、
実際に印刷実験を行った活版印刷カードによる作品です。

「活版TOKYO2026」出展情報
会期
2026年1月16日(金)12:00〜19:00
2026年1月17日(土)・18日(日)11:00〜17:00
会場
神保町三井ビルディング、テラススクエア
(※2会場開催)
まんまる〇は三井ビルディングにて出展しています。
※出展は3日間行いますが、
今回の制作実験作品の販売は1月17日(土)からとなります。

活版印刷による実験作品カードと
制作実験についての思考をまとめた文、
『ポラーノの広場』全文を収録した冊子のセットでの販売です。
実際に手に取り、紙の重さ、凹み、文字の揺らぎを感じてもらえたら幸いです。
まんまる〇 若林